ソフトウェア・シンポジウム 2021 in 大分 (オンライン開催)

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ソフトウェア・シンポジウム 2021 にご投稿いただいた論文/報告/Future Presentation に対して,プログラム委員会で審査を行い,下記を採択いたしました.

皆さま,ご執筆,ご投稿いただき,ありがとうございました.

時間 トラック1 トラック2 トラック3
6/2(水)
14:30-15:45
アーキテクチャ・設計
UI/可視化/シミュレーション
地域連携・産学連携
6/2(水)
16:00-17:15
組み込み・制御
ソースコード解析
教育
6/3(木)
9:10-10:25
品質・信頼性
自然言語分析
Future Presentation

アーキテクチャ・設計

[研究論文]
機能共鳴分析法の図式表現を用いた視覚的シナリオベース設計支援
日下部 茂 (長崎県立大学)
要旨:
本稿ではソフトウェアシステムの開発上流工程におけるシナリオ分析に機能共鳴分析法FRAMの図式表現を用いることを論じる.シナリオは,人やシステムの機能や活動に関する記述であり,開発されるソフトウェアシステムにより何が実行されるのか,どのような効果がもたらされるのかなどを記述できる.自然言語で記述されたシナリオは,ソフトウェアの専門家でなくとも理解や誤りの修正など可能であるが,文字情報の読み込みを前提とする.このようなシナリオの記述や分析を,機能や活動に着目してモデル化と分析を行うFRAMを用いて支援することを提案する.FRAMは図式表現を持っており,視覚的で直観的な理解の促進といったシナリオ分析支援が可能と考えた.本稿ではこのようなFRAMの図式表現を用いたシナリオ分析支援の方法と事例について論じる.
研究論文

最優秀論文賞
[研究論文]
ゴール指向要求分析とシステム安全分析を利用したAIシステム品質の個別ガイドライン導出方法の提案
Individual Guideline Derivation Method in AI System Quality Assessmentby use of Goal-Oriented RequirementsAnalysis and System Safety Analysis
相津 一寛 (パナソニック) , 石川 冬樹 (国立情報学研究所) , 小宮山 英明 (コニカミノルタ) , 栗田 太郎 (ソニー) , 柳原 靖司 (ブラザー工業) , 徳本 晋 (富士通)
要旨:
本論文では,AIシステムの品質を保証する手段として,IGDM-AIQA法(Individual Guideline Derivation Method in AI system Quality Assessment)を提案する.現在,AIシステムは多くの分野で開発,運用されているにも関わらず,その特性から品質保証の方法が確立されていない.このような問題に対し,AI開発の知見を集約してガイドライン化することが議論されているが,これらガイドラインは有識者向けで抽象度の高い内容となっており,AIの知見が必ずしも十分でない品質保証担当者が効果的に活用できるとはいえない.IGDM-AIQA法を用いることで,対象システムの要件に基づいて品質アセスメントに必要な観点を導出し,品質保証の現場担当者が精度良く品質アセスメントを行える.
研究論文

[経験論文]
DX推進に向けたエンタープライズアーキテクチャの設計プロセスの検討
宗平 順己 (武庫川女子大学)
要旨:
DXレポート2では,「デジタルトランスフォーメーションはデジタルエンタープライズになるまでのプロセスのことである」との定義がなされ,デジタルビジネス向けのシステムの開発と既存業務システムのデジタル化の両方の取組を同時に行う必要があるとされている.デジタルビジネスを支えるデジタルプラットフォームのアーキテクチャについてはITベンダー等から様々な提案がなされるだけでなく,AWSでの構築事例も報告されている.既存業務システムのアーキテクチャのベストプラクティスについてもMITSloanからアーキテクチャ成熟度モデルが提案されている.しかしながら,デジタルビジネスを支えるシステムは単独で構築されるよりも既存業務システムと関連することが多く,両者を連携させると同時に,既存業務システムのモダナイズも同時に進める必要がある.しかしながら,その具体的な方法についてはDXレポート2には明確な提示はない.本レポートでは,DXの教科書とでもいえる存在であるDesigned forDigitalをベースに,DXに取り組む企業の指針となるアーキテクチャの設計プロセス検討結果を報告する.
経験論文

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UI/可視化/シミュレーション

[研究論文]
リアルタイムトラフィック可視化システムとその拡張性について
吉田 和幸, 宇野 秀亮, 池部 実, 吉崎 弘一 (大分大学)
要旨:
ソフトウェア開発の初期段階においてプロトタイプを組み立てて実際に動かしてみる作業は有用である.インターネットトラフィックの増大に伴い,サーバやそこで動作しているサービスを調査するスキャンも増加している.スキャン活動のいろいろな側面をリアルタイムに表示するシステムを作成した.宛先IPアドレスの下位2オクテット,宛先ポート番号など16ビットを取り出し,それを基に分類し,それぞれのパケット数をカウントして,256×256に展開し,全体の分布を表示している.これにより,ネットワークトラフィックの概要の把握が容易になる.パケットヘッダの中の16ビット幅のいろいろな場所について分布を表示できるように容易に拡張できるように設計した.
研究論文

[研究論文]
個体群動態論に特化したマルチエージェントシミュレーション基盤 Re:Mobidyc
小田 朋宏 (SRA) , Gael Dur (静岡大学)
要旨:
Re:Mobidycは生物の個体群動態に特化したマルチエージェントシミュレーション(MAS)基盤である.科学研究の道具としての要請に応えるために,Re:Mobidycではスケーラビリティ,再現性,検証可能性を重視してモデリング言語,モデリング環境および実行系を設計した.本論文では,Re:Mobidycのモデリング言語,モデリング環境および実行系について,個体群動態研究からの要求に基づいた設計指針および実現について紹介し議論する.
研究論文

[研究論文]
スマートフォンにおけるフリック操作による画面ロック解除手法の提案
喜多 義弘, 山下 湧介 (長崎県立大学)
要旨:
スマートフォンにおいて,画面ロックを解除するための本人判定手法として,パスワード入力,暗唱番号入力,指紋認証,顔認証が用いられている.これらの手法は,ユーザにとって扱いやすく,かつ一定の安全性を保つことができる.しかし,パスワード入力や暗証番号入力においては覗き見攻撃への耐性が低いという課題が,一方,指紋認証や顔認証においては生体情報の再登録が容易ではないという課題がそれぞれある.そのため,解除に必要なこれらの情報が漏洩した場合,安全性が損なわれてしまうことが懸念される.そこで本研究では,これらの課題へ柔軟に対応するために,フリック操作による画面ロック解除手法を提案する.具体的には,パスワードとしての入力文字と,生体認証としてのフリック操作をそれぞれ判定することで,ユーザ本人かを判定する手法である.これにより,パスワードが漏洩してもフリック操作の生体情報で解除を防ぐことができ,漏洩後にパスワードを変更するだけでフリック操作の生体情報も更新することが容易にできる.
研究論文

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地域連携・産学連携

[事例報告]
大分県におけるGPU 活用に向けた取組み
石松 博文, 青木 栄二, 渡辺 律子, 原田 美織 (ハイパーネットワーク社会研究所)
要旨:
国内外では,既に GPU(Graphics Processing Unit)をコア技術とした様々な商品,サービスが提供されている。日本では米中両国が GPU を含む xPU の開発に鎬を削る中,機器の開発はおろか,それを使いこなす人材や問題認識までも不足する現状がある。しかしながら私は,このような ICT 技術の大転換期こそ,その技術を活用した日本の独自性がある商品,サービスを展開できるチャンスではないかと推察する。

大分県は,九州では福岡に次ぐ2番目の工業出荷額を誇る一方で,県内の事業所数減少や人手不足等の根本的課題が存在する。このため,企業が抱える課題,更には地域の課題についてGPUを活用することにより解決できる様々な具体的事例を創出し,国内外に展開することが地域,更には日本にとって有益なことと考えている。当研究所は、2019 年に開催した別府湾会議において、近い将来には、GPU をいつでもどこでもだれでも使いこなせるように、「おおいた AI テクノロジーセンター」の設立を宣言した後、産学官10団体と共に設立、運営している。本センターの地域における GPU 活用を進めるための取組みを紹介する。
事例報告(要旨)
発表スライド

[経験論文]
深層学習を用いた路線バスにおける乗客ODおよび混雑状況の推定手法の開発
山下 倫央, 西浦 翼, 久保田 遼裕, 横山 想一郎, 川村 秀憲 (北海道大学), 弓崎 潔, 佐藤 好美 (シーズ・ラボ)
要旨:
本稿では,路線バスを対象としたバス車内モニタリングシステムの開発をおこない,路線バスを安全で利便性の高い公共交通機関とすることを目指す.バス車内モニタリングシステムの実用に向けて,深層学習を用いた乗客のODデータの推定手法やバス車内の混雑状況の推定手法を提案する.これらの提案手法の有効性を検証するため,実際の路線バスを利用して検証用データを作成した.検証用データを用いた実験をおこない,バス乗客のODデータの推定やバス車内の混雑状況の推定の実用可能性を確認した.
経験論文

[事例報告]
人工知能技術の産業応用に向けた産学連携に関する事例報告
山下 倫央 (北海道大学)
要旨:
本発表では,大学教員サイドから見た共同研究を主軸とした産学連携に関する事例を報告する.人工知能技術の研究に取り組み,産業応用を進めている大学教員の立場から,民間企業との連携方法の一つである共同研究の準備フェーズから実施フェーズまで流れを概説し,円滑に共同研究を進めるためのノウハウを共有する.本発表が契機となり民間企業と大学の共同研究が促進され,イノベーションの創出につながることを期待する.
事例報告(要旨)
発表スライド

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組み込み・制御

[経験論文]
組込みシステムへの派生MBD適用に向けたパラメータ設定方式の検討
秋下 耀介, 大島 浩資, 若林 昇, 川上 真澄 (日立製作所)
要旨:
組込みソフトウェア開発においては,ソフトウェア開発規模が増大しつつ短納期化する中で効率的に開発を行うため,開発者は派生開発により新規開発量を削減している.また,モデルベース開発(MBD: Model Based Development)を取り入れることでより効率的なアプリケーション開発を実現する.特に制御ソフトウェアでは,ハードウェアの種類により派生製品が存在しており,類似した機能を持つソフトウェアを開発することが多い.そこで,MBDにおける派生開発では,ハードウェア仕様の異なる部分のパラメータ化によりモデル内で制御ロジックとハードウェア仕様を分離し,パラメータ変更のみで派生製品を実現する方法が考えられる.一方でパラメータ設定においては,不具合を起こさないため設定対象となるパラメータの適切な選択や,パラメータ数が多い場合には設定の効率化が必要となる.

本論文では,仕様書とパラメータ間のトレーサビリティに基づき,仕様に対して変更すべき適切なパラメータを選択することで派生開発を実現するパラメータ設定方式を検討する.これを実現するため,過去の実プロジェクトの仕様書やパラメータを分析しパラメータ設定ツールを開発した.パラメータ設定ツールを実プロジェクト適用した結果,仕様に応じて適切なパラメータを選択可能であるほか,パラメータ設定工数の94%が削減可能であり,工数削減に有効であることがわかった.
経験論文

[研究論文]
シェルスクリプトを用いたUNIX哲学に基づくリアルタイム制御
柳戸 新一, 松浦 智之, 鈴木 裕信 (USP研究所), 大野 浩之 (金沢大学)
要旨:
ソフトウェアを中心としたシステムの移植性・持続性は重要な観点である.GancarzのUNIX哲学においてはハードウェアに依存する高性能なシステムより,多少性能が劣っても移植性に優れたシステムの方が将来的に淘汰されにくいとされる.筆者らはこのUNIX哲学に基づき,移植性・持続性を最大まで高めるために,シェルスクリプトのストリーム指向を活用した開発手法を提案してきた.これらの手法はサーバやものづくりをはじめとする幅広い分野で適用され,その有効性が実証されてきた.

一方,これまでリアルタイム制御を必要とする組込み型システムでGNU/Linux を用いる場合,低遅延カーネルを利用したり,スケジューラのスケジューリングポリシーをリアルタイム(RT)クラスに変更するなどの工夫が行われてきた.しかし,スケジューラの変更はマルチタスク処理を活かしたストリーム指向プログラミングと相性が悪く,並列処理が実施されなくなるといった危険性がある.

本研究ではリアルタイム制御を行うシステムに対してもUNIX哲学を適用可能であることを示すために,標準スケジューラで動作するシェルスクリプトを用いた倒立振子の安定化を試み,評価を行った.検証の結果,本手法に一定の実用性があることが実証された.
研究論文

最優秀発表賞
[経験論文]
UNIX機におけるIoT機器制御のためのタイミング管理
松浦 智之, 柳戸 新一, 鈴木 裕信 (USP研究所), 大野 浩之 (金沢大学)
要旨:
さまざまな電子デバイスをIoT機器として活用するためには,UNIX系OS搭載コンピュータ(以降,UNIX機)と接続・連携できると都合が良い.なぜなら,UNIX機はTCP/IPスタックを既に持っていて,かつ広く普及してるなど,開発や保守にかかるコストを抑えられるという期待が持てるからである.しかし,UNIX機からそれら電子デバイスを直接制御する場合には,解決しなければならない課題が多い.例えば,プリエンプティブなタスクスケジューラや,パイプライン上のバッファリング機能などにより,制御にとって重要な「タイミング」を損なう要因がUNIXにはいくつかある.また,POSIX(POSIX.1-2017)の範囲では精密なタイミング管理のためのコマンドも十分に揃っていない.

そこで著者らは,タイミングの変動を低減あるいは管理可能にするためのアイデアと,それに基づくコマンドを考案した.ただし,POSIX仕様を逸脱しない範囲のUNIX機(POSIX機と称す)で実現するという制約を課した.逸脱するほどUNIXというプラットフォームから外れていき,UNIXが本来持っている高い汎用性や持続性という恩恵が得られなくなっていくからである.そして,新たに作成したタイミング管理コマンドを用い,POSIX機でのPID制御による倒立振子を実現するなど,いくつかの研究で実用性が確認できたため,POSIX機でのタイミング管理実現のための考え方,および作成したコマンド実装について本論文で報告する.
経験論文

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ソースコード解析

[研究論文]
構成管理ツールにおける命令的操作が及ぼすソースコードレビューへの影響調 査
頭川 剛幸 (京都工芸繊維大学), 近藤 将 (九州大学), 西浦 生成, 崔 恩瀞, 水野 修 (京都工芸繊維大学)
要旨:
近年複雑化するITインフラに対応するため,インフラをコードで定義する構成管理ツールが用いられている.表現方法として計算機の状態を定義する宣言型と,スクリプトを記述する命令型がある.命令型は,環境の再現性や堅牢性の脅威になるとされているが,ソフトウェア開発にどのような影響を与えているのか明らかになっていない.本研究では,構成管理ツールの実行の最小単位であるモジュールから,命令的操作を行うモジュール(以下命令的モジュール)によって,コードレビューの時間が増大すると仮説を立てた.命令的モジュールを含むプルリクエスト(PR)について,PRが評価されるまでの時間,レビュースレッドの所要時間,変更行数およびファイル数を調査した.その結果,命令的モジュールの有無によって,マージされたPRおよびレビュースレッドの所要時間に差は見られなかった.一方,変更行数およびファイル数に増加が見られた.これらの結果から,命令的モジュールを使用することで変更規模を増大させ,レビュー時の確認項目が増大する可能性があるが,レビュー時間は変化しなかったため,コードレビューにおいて命令型の使用は問題とならない可能性があることがわかった.
研究論文

論文奨励賞
[研究論文]
深層学習を用いたプログラム品質向上のためのソースコード画像分析手法の提案
小川 一彦, 中谷 多哉子 (放送大学)
要旨:
我々は,画像認識と物体検出のアルゴリズムを用いて,ソースコードを画像化してプログラムの不具合の可能性のある箇所を指摘可能であることを検証した.不具合を起こすプログラムは見た目に共通点があり,教師あり学習の深層学習を用いて学習を行うことで,同様の不具合のある箇所を指摘すると考えたのである.教師あり学習の深層学習で,画像に変換したソースコードを学習させるため,動物や人工物などを学習する場合と同じ手法,パラメータを用いて学習させても,精度は上がりにくい.プログラムの不具合を推論させるために,画像に変換したソースコードが教師ありの深層学習で正しく学習されなければ,高い精度で推論を行うことはできない.作成した学習データが正しく学習されるため,学習データをどのように作成すればよいか,学習が行なわれるための深層学習のパラメータの選択はどうすればよいかということを明らかにする必要がある.本研究では,画像認識と物体検出のアルゴリズムを用いて深層学習を行う際に,学習のためのデータをどのように作成することで,教師あり学習の深層学習で学習することができるか明らかにする.併せて,各アルゴリズムで作成した学習モデルを使用して被験者のプログラムを推論した結果の比較と検証を行なう.
研究論文

[研究論文]
Arduinoプロジェクトにおける Example Sketch の再利用分析
寺村 英之, 崔 恩瀞 (京都工芸繊維大学), 近藤 将成 (九州大学), 吉田 則裕 (名古屋大学), 水野 修 (京都工芸繊維大学)
要旨:
ソフトウェア開発を効率的に行うためのソースコードの再利用はコードクローンを作り込む原因となる.コードクローンの存在はソフトウェアの品質に影響を与えうるため,これらの調査が必要である.例えば組み込みシステムの開発に用いられるArduinoにはコード再利用の仕組みがあり,再利用の調査ができると便利であると考えられる.しかし我々の知る限りではArduinoにおけるソフトウェアプロジェクトであるスケッチの再利用に関する調査は行われていない.本研究はスケッチでの再利用調査をするためにArduinoに特化したコードクローン検出手法を提案し,実際にスケッチから再利用と考えられるコードクローンを検出した.
研究論文

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教育

最優秀発表賞
[事例報告]
子供たちの学びたい欲求を引き出すオンラインツール ~小さな小学校で小さなmiroを使い始めた話~
根本 紀之 (アジャイル札幌), 野尻 育代 (北海道北見市立上仁頃小学校)
要旨:
1. 背景と課題
 Covid-19の広がりに伴い,ソフトウェア業界ではZoomやTeamsやDiscordなど急速にオンラインツールが普及した.そのうちの一つにオンラインホワイトボードのmiroがある.これは複数人が同時に作業可能なアジャイル開発向けのオンラインのツールである.
 一方,Covid-19は北海道の地方都市での教育にも影響を及ぼしており,北見の小学校では下記の問題が発生し,解決策を模索していた.
・突然臨時休校になり,授業が進まない
・登校可能になった後も,子供たちの安全な距離を保ちながら学ぶ環境を整えなくてはならない

2. 解決方法
 前述の問題を解決するため,小学校5年生と6年生の7名の複式クラスを対象に校内での授業(オフラインでの授業)の中でmiroを導入した.miroを使うことでオフラインでのグループワークでも安全な距離を保つことができる.
 最初の授業としては,人物や出来事が関連線でつなぐことができる日本の歴史を選んだ.ある要素同士を関連線でつなぐことは,オンラインホワイトボードツールの得意とするところである.
事例報告(要旨)
発表スライド

[事例報告]
高専専攻科におけるテンソルデータ処理プログラミング教育の実践
山本 直樹, 石田 明男, 村上 純 (熊本高等専門学校)
要旨:
本報告では,熊本高専専攻科の授業科目の中で実施されているテンソルデータ処理のプログラミング教育の実践事例について述べる.
1.はじめに
テンソルはデータ処理では多次元配列として利用される重要なデータ構造の1つであり,テンソル分解の形で,信号処理,数値線形代数,コンピュータビジョン,数値解析,データマイニング,グラフ解析,神経科学など幅広い分野で応用されている[1].これまで我々は,テンソルデータ処理の理解支援のために立体パズルを用いたツールを開発してきている[2].最近では,テンソルデータ処理を学習するための自学自習用教材も開発している[3].本報告では,これまで開発されたツールおよび教材の利用も含めた,熊本高専専攻科の授業科目で実施されているテンソルデータ処理に関するプログラミング教育の実践事例について述べる.
事例報告(要旨)
発表スライド

[事例報告]
WHYに重点を置いたプロセストレーニングの改善
片山 泰司 (オムロンソーシアルソリューションズ)
要旨:
品質をより良くするには,品質を良くしたいと考えて,実際に行動までする人財を増やす必要がある.プロセスとは何か,何のために必要なのか,を現場に納得してもらい,プロセス定着による品質確保につなげることを狙って活動に取り組んだ.WHY(なぜそれをやるのか)に重点を置いた,プロセストレーニングの改善を実施し,プロセスの目的や意義を伝えることで、プロセスに対する現場の納得感や関心を高めた.本発表ではプロセストレーニングの改善事例について紹介する.
事例報告(要旨)
発表スライド

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品質・信頼性

最優秀論文賞
[研究論文]
アリコロニー最適化法を用いたモデル検査の効率化のための探索戦略
熊澤 努 (SRA), 滝本 宗宏 (東京理科大学), 神林 靖 (日本工業大学)
要旨:
モデル検査は,ソフトウェアシステムの挙動を記述したモデルが,望ましい仕様を満たすかどうかを検査する形式的検証技術である.モデルや仕様には,有向グラフを用いた状態遷移モデルによる表現を採用することが多い.モデル検査は,モデルと仕様によって構成される状態空間を探索して仕様違反を発見し,反例として返す.モデル検査では,状態の指数関数的な増加のために検査が困難になる状態爆発問題が知られているが,加えて,反例の可読性を高めることも重要である.これらの問題を解決するために,群知能の一種であるアリコロニー最適化法を用いた検査技法が提案されている.これは,状態空間を非網羅的に探索することで,状態爆発問題を軽減し,同時に可読性の高い短い反例を求める方法である.本論文では,アリコロニー最適化法によるモデル検査技術の更なる効率化のための探索戦略を提案する.提案する戦略は,アリコロニー最適化法を用いた従来の技法よりも広範囲に渡る探索を実現し,大規模なモデルに対しても反例の発見を速めて状態爆発を低減する.従来法との性能評価実験を行い,提案する探索戦略が実行時間の高速化と消費メモリの低減を向上させ,効率的な探索を実現することを確認した.
研究論文

[研究論文]
要求仕様に対するテストカバレッジ分析におけるグラフクエリの適用について
有若 新悟, 中川 博之, 土屋 達弘 (大阪大学)
要旨:
本研究では,グラフデーターベース,および,グラフクエリのソフトウェア工学上の課題への応用について議論する.具体的には,要求仕様の集合とテストケース記述の集合,および,それらの要素間の類似度がデータとして与えられていることを前提に,どの要求仕様がどの程度テストされているかをグラフデータベースを用いて分析する方法を提案する.典型的な分析項目に対するグラフクエリとSQLクエリを示し,記述の簡潔さについてグラフクエリが優れていることを示す.また,実用規模のデータを用いて,クエリの処理時間についても比較を行う.
研究論文

論文奨励賞
[研究論文]
ソフトウェア信頼度成長モデルとベイズ統計機械学習によるオープンソースソフトウェア動的信頼性モデルの提案
杉山 透放, 中谷 多哉子 (放送大学)
要旨:
近年,産業界でオープンソースソフトウェア(OSS)を製品ソフトウェアに組み込んで使用することが増えてきているが,品質,特に信頼性に課題があると指摘されている.しかし,信頼性を評価するための既存のソフトウェア信頼性モデル,特に動的信頼性モデルはOSS特有の開発形態と合っていないことが指摘されている.そこで,従来の動的信頼性モデルを取り込んだ状態空間モデルとベイズ統計機械学習による信頼性モデルを,従来の動的信頼性モデルに加えてOSS特有の開発形態を考慮した動的信頼性モデルとして提案し,)実際のOSSの故障発生件数の予測を行った.提案手法を用いた予測結果を,従来の動的信頼性モデルにより同様の予測を行った結果と比較し,評価を行った.
研究論文

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自然言語分析

[研究論文]
要求仕様に対する形態素ベースドレビューの提案
柏原一雄, 鈴木 淳, 新留 光治, 松原 潤, 李 路雲, 不破 慎之介 (デンソークリエイト)
要旨:
要求仕様が自然言語のような曖昧さを含む記法で記述されている場合,曖昧に表現された文が不具合を誘発させることがある.実際に我々の組織では,「修飾語」または「同義語」を使用している文が不具合を誘発していた.要求仕様書から修飾語・同義語が使用されている曖昧な文を検出するために,「形態素ベースドレビュー」を考案した.実開発に形態素ベースドレビューを導入し,効果を確認した.
研究論文

論文奨励賞
[研究論文]
自然言語処理的アプローチによるクラス図関連線の予測
井原 輝人, 内田 眞司 (奈良工業高等専門学校), 飯田 元 (奈良先端科学技術大学院大学)
要旨:
ソフトウェア品質特性[1]の一つに理解性がある.理解性とは,成果物を読み手が容易に理解できるかを指す.UML図における理解性を定量的に表現できれば,評価値に基づいた設計品質の評価や向上に繋がると期待される.しかし,理解性は個人の感覚や経験則に依存する部分が大きく,定量化する実用的な手法は存在していない.中村[2]らは読み手の理解性が図の構成要素個々の妥当性判断に基づいて行なわれていることに注目し,妥当性を定量的に評価するメトリクスの定式化を試みた.しかし,UML図においては個々の図形要素が複雑に関連付けられ得るため,理解性に影響を与える要素とそれらの関係性をすべて定式化することは極めて困難である.よって我々は同様の目的に対して機械学習を用いた妥当性の定量化を提案する.本研究ではその第1段階として,関連線の種類の予測を行うモデルを作成した.被験者実験を実施し,モデルの予測結果と,被験者の判断結果を比較したところ,高い精度で一致したことから,予測モデルは個々の関連線の人間による関連線に対する妥当性評価を摸倣可能であるといえ提案手法で関連線の種類において理解性の定量化が可能であることが明らかとなった.関連線の種類や命名の妥当性を予測モデルに基づいてUML図の理解性について部分的に定量的な評価可能となることを示した.今後,他の要素も含めた予測モデルへと拡張をすることでUML図(クラス図)全体の理解性評価手法に結びつけられると期待される.
研究論文

[研究論文]
クラス名における命名バグの検出手法
有村 徳崇, 紙名 哲生 (大分大学)
要旨:
オブジェクト指向におけるクラスは多くの場面で再利用される.しかし,クラス名がその機能を正しくユーザに伝えられなければ,ユーザはそのクラスの機能を理解するのに失敗し,再利用性を損なう.本研究では,クラス名に命名バグがあるかどうかをそのクラスの設計者に伝えるための検出手法の開発を試みた.まず,あるクラスにおいてその意味内容とクラス名からユーザが読み取る意味内容が異なるならばクラス名に「命名バグ」があるとして,クラス名における命名バグを「クラスメンバにあるものをクラス名が表現できていない場合」と「クラス名が示すものがクラスメンバに存在しない場合」に大別する.次に,クラス名とクラスメンバの特徴をソースコードから抽出し,それを予め準備された「クラスカテゴリ」(クラス名とクラスメンバの特徴に関するルール)の集まりと順次比較する.抽出されたクラス名とクラスメンバの特徴と、クラスカテゴリで示したルールのうちのどれかの間に矛盾があった場合,命名バグとしてユーザに報告する.オープンソースソフトウェア(OSS)をもとにデザインパターンに関するいくつかのクラスカテゴリを作成し,その妥当性を評価した.
研究論文

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Future Presentation

[Future Presentation]
リアクティブプログラミングに基づく分散計算基盤の可能性
紙名 哲生 (大分大学)
要旨:
リアクティブプログラミング(RP)言語が,実世界に分散配置された様々なモノやサービスを繋げて新たな価値を生み出すための適切な抽象化を提供できるかを考える.とくに,RPにおける時変値を分散システムに適応させる際の整合性維持や永続化などの課題について議論する.
Future Presentation

[Future Presentation]
マンモスの牙 ~Monetize Metrics Vs. Engineering Metrics~
松尾谷 徹 (デバッグ工学研究所), 増田 礼子 (フェリカネットワークス)
要旨:
この資料はソフトウェア・シンポジウム2021のFP(Future Presentation)の資料として作成したものです.提案の主旨は,ソフトウェア工学(SW工学)が産業界の「働き方」に及ぼ した意図しない副作用(牙)を示し,その対策について検討することです.

意図しない副作用とは,技術者に対し生産性向上の責務を語る労働強化です.産業界がSW工学に期待したのは,QCD改善や属人性排除など,Monetize (金銭化)側面での生産性向上であり,SW工学は,この期待に対して様々な技法や技術を研究し,政策と共にソフトウェア工場やソフトウェアCADを推進してきました.しかし,ソフトウェア関連活動の実態は,雇用されている技術者の属人性に依存しており,本質的な特性は変わりません.掲げられた生産性向上の目標指標(Monetize Metrics)は,工学的な手段ではなく,雇用された人々への労働強化的な副作用を生み,職種としての評価すら下げてしまいました.

ここでは,ソフトウェア産業における雇用者の「働き方」の何が特殊なのか?,SW工学は「働き方」を守って技法や技術を提案できるのか?など,この問題について考え方や方向性を示し,その評価を行う実証的なEngineering Metricsの必要性について提案します.
Future Presentation

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