ソフトウェア・シンポジウム 2020 (オンライン開催)

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ソフトウェア・シンポジウム 2020 にご投稿いただいた論文/報告/Future Presentation に対して,プログラム委員会で審査を行い,下記を採択いたしました.

皆さま,ご執筆,ご投稿いただき,ありがとうございました.

時間 トラック1 トラック2
6/17(水)
13:00-16:10
要求
開発/深層学習
マネジメント
QA/派生開発
6/18(木)
9:00-11:25
教育
Future Presentation(1)
形式仕様/モデル検査
Future Presentation(2)

要求

論文奨励賞
[研究論文]
多様なステークホルダの満足度に着目したシステムの安全性・セキュリティ要件の抽出と検証
柳原靖司 (ブラザー工業株式会社) , 石川冬樹 (国立情報学研究所) ,吉田邦雄 (オムロン株式会社) , 栗田太郎 (ソニー株式会社)
要旨:
本論文では,ステークホルダの多様な視点を取り入れながら客観的かつ系統的にシステムの安全性・セキュリテ ィ要件の抽出と検証を行う手段として,SSMS 法(Safety and Security requirements analysis method with Multiple stakeholder perspectives on STAMP/STPA)を提案する.近年,AI/IoT に代表されるようにソフトウェアが大規模・複雑化する中で,抜け漏れなくシステムの安全性・セキュリティ要件を抽出し,かつステークホルダの間で合意形成することが難しくなっている.SSMS 法を用いることで,対象ドメインの知識を十分に有してなくても複雑なシステムのハザードと脅威に対する対策群を実用的な量で獲得し,要件の満足度に関する評価指標で定量的に評価することができる.
This paper presents a safety and security requirements analysis method with multiple stakeholder perspectives on STAMP/STPA called SSMS Method. In recent years, as software has become larger and more complex, as represented by AI/IoT, it has become difficult to extract safety requirements comprehensively and to form consensus among stakeholders adequately. SSMS Method facilitates developers to acquire safety and security requirements without sufficient knowledge of the target domain and to evaluate them quantitatively based on their assent.
研究論文

最優秀論文賞
[研究論文]
要求仕様の誤解釈を検出するDomain Word Modelingの提案
柏原一雄 (株式会社デンソークリエイト) , 不破慎之介 (株式会社デンソークリエイト) , 石川冬樹 (国立情報学研究所), 長井亘 (テックスエンジソリューションズ株式会社) , 林香織 (株式会社デンソークリエイト) , 栗田太郎 (ソニー株式会社)
要旨:
仕様が自然言語のような曖昧さを含む記法で記述されている場合,仕様の誤解釈を誘発しやすい.実際に我々の組織では,「抽象的に表現された用語」を「不足している前提知識」で解釈することにより,誤解釈が発生していた.誤解釈の可能性のある用語を検出するために,用語の解釈を可視化する手法「Domain Word Modeling」を考案した.「Domain Word Modeling」は,導入のしやすさを重視した手法である.実験で,実開発において定義された要求仕様を入力として,考案手法を実行し,効果を確認した.
研究論文

[研究論文]
「意図」の位置
漆原憲博 (株式会社ジェーエフピー) , 佐々木千春 (株式会社ジェーエフピー)
要旨:
納品したシステムが,発注者の最終の目的あるいは端的に「意図」とでもいうべきものを満たしていないがゆえに,受入の承認を受けられない場合がある.自社製品の最終の妥当性確認が得られなかった場合も含む.本論では「意図」の解釈の随意なところがその原因であると考える.また「意図」を,システムに多大な改変を与える大きな要求と考え,まずは本稿を始める.その後,「意図」を解釈する上で基本な考えがあるということと,それを踏まえて,意図が開発の最後に問題を起こさないようにするための意図の扱い、すなわち開発プロセスでの管理法を提案する.挿話的に意図の前向きな効果も入れた.最後に「意図」とシステムの関わりを述べ,意図の研究を開発論の中に取り入れることを提案する.
研究論文

[研究論文]
機能共鳴分析法と行動分析を併用したユーザーストーリー分析
日下部茂 (長崎県立大学)
要旨:
ユーザーの視点を重視したソフトウェア開発の上流工程でのシナリオ分析に機能共鳴法と行動分析を併用することを提案する.この提案の背景には,大学学部生を対象にモバイルアプリケーション開発の演習指導を行った際の経験がある.作業成果物に以下の様な問題を持つものが多かった.シナリオの不明瞭さやシナリオ中の齟齬,やり取りの不明確さといった問題があった.演習ではユーザーストーリーマッピングなど行ったが,それでも不十分であったため,行動分析と機能共鳴分析法を併用することを試みた.ユーザーストーリー分析において,スト ーリー中の構成要素とその間の流れをより明確化することでシナリオの完成度を高め,また,シナリオで想定されているユーザーの行動が生起する根拠の分析を強化することを目指した.大学の学部生による実験でその効果を評価した.
研究論文

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開発/深層学習

[研究論文]
3D 計測点群データからの電柱抽出処理とその応用
高志毅 (岩手県立大学) , 加藤徹 (岩手県立大学) , 高橋弘毅 (岩手県立大学) , 土井章男 (岩手県立大学) , 榊原健二 (株式会社TOKU/PCM) , 細川智徳 (株式会社TOKU/PCM) , 原田昌大氏 (株式会社タックエンジニアリング)
要旨:
宮古市の末広町では,車の通行を抑制して,安全で安心して歩ける道路空間の整備を目指している.そこで,本研究では道路空間を3D 計測し,3D 点群データから電柱を削除し,道路空間の整備のシミュレーションを行った.さらに,3D点群データを2 次元画像に変換し,ハフ変換を用いて電柱を識別することで,電柱化抽出処理の自動化を試みた.
研究論文

[研究論文]
オープンソース・ソフトウェア開発コミュニティにおけるライフサイクルの視覚化
増田礼子 (フェリカネットワークス株式会社) , 松尾谷徹 (有限会社デバッグ工学研究所)
要旨:
オープンソース・ソフトウェア(OSS : Open Source-Software) は目覚ましい発展を遂げている.開発を推進するOSS 開発コミュニティは,5 年~10 年という期間をかけて成長しており,ライフサイクルが長いという特徴がある.近年では,日々約5 万件のOSS 開発プロジェクトが登録されているが,半年以上継続して開発活動を行っているプロジェクトは5 % 程度であり,約95 % は半年以内に開発を終了している.この要因の一つには,メンバのモチベーションの低下があると考えられる.本研究では,モチベーションを維持する要因を探るため,コミュニティの活動状況という観点から継続しているOSS 開発コミュニティのライフサイクルの視覚化を試みた.視覚化は,コミュニティの開始から終了までをライフサイクルと定義し,GitHub をケーススタディ対象としてその変化を計測した.具体的には,メンバの活動記録を期間に分割し,活動量の不均衡状態を経済学の分野で用いられるジニ係数の変化として求めた.ここでは,ライフサイクルの測り方と視覚化について報告する.この手法を用いて分析を行った結果,OSS 開発コミュニティが成長期にある場合には,ジニ係数の値が大きくなることが明らかとなった.本研究で提案するOSS開発コミュニティのライフサイクルの視覚化手法を活用することにより,メンバのモチベーションなどについて新たな知見を得ることができる.また,OSS の利用者にとっては,視覚化した情報を活用することで,より安定したサービスやプロダクトを選択する際の一助になることが期待できる.
研究論文

[研究論文]
CNN-BIシステムの複数モデルによる精度向上のための研究
小川一彦 (放送大学) , 中谷多哉子 (放送大学)
要旨:
ソフトウェアの品質を向上させるため,これまで多くの研究が行われてきた.その方法の一つにソースコードの不具合を推論する方法がある.不具合があると推論された箇所を重点的にデバッグとレビューを行うことで品質の向上に役立てている.一例として,メトリクスを求め不具合の起こる可能性が高いロジックの推論を行うことで,品質の向上に貢献してきた.最近では,メトリクスのような統計的手法だけでなく,機械学習及び深層学習を用いて,ソースコード片からソフトウェアの不具合の混入を推論する方法などがある.我々は,ソースコードを画像化して不具合の有無でカテゴリ分けを行い,深層学習を用いて学習させた.学習の結果,作成されたモデルを使用して,プログラムの不具合を推論した.本稿は,不具合の推論を行う上で課題であった推論精度の向上を試みた.これまで,全てのプログラムを学習させて一つのモデルを作成してきたが,本稿ではプログラマを条件によりグループ化し複数のモデルを作成した.条件は,プログラムを作成したプログラマの経験年数およびスキルを評価した結果を用いた.この条件を用いて評価の近いプログラマでグループ化している.グループ化したプログラムで,それぞれ学習を行い複数のモデルを作成した.同等のスキルを持ったプログラマが作成したプログラムは,コードの品質が揃うため,深層学習において不具合の特徴を捉えやすくなる.複数の学習モデルを用いて推論した結果を,集約して全体の推論結果とすることで,精度が向上すると考えたのである.推論の精度が向上することを確かめるため,実験を行った.
研究論文

[事例報告]
経食道心エコーシミュレーションソフトウェアの開発
高橋弘毅 (岩手県立大学) , 加藤徹 (岩手県立大学) , 土井章男 (岩手県立大学) , 朴澤麻衣子 (岩手医科大学) , 森野禎浩 (岩手医科大学)
要旨:
経食道心エコー検査は,エコー画像のみを参照しながら医師が手動でプローブの深さ,扇状の超音波照射角度を感覚的に調整して行う.しかし,エコー画像のみでは,心臓の 3 次元的な位置把握が困難である.そこで,CT 画像を用いて,経食道心エコー検査をシミュレーションする診断支援システムを構築した.本システムは, CT 画像から経食道を指定して,その位置に心エコー装置のプローブを配置して,心エコー風の画像を作成する.
事例報告(要旨)
事例報告(発表スライド)

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マネジメント

[経験論文]
動画配信事業におけるプロジェクト管理
清水祐作 (千葉工業大学) , 小笠原秀人 (千葉工業大学)
要旨:
近年の動画広告市場規模の拡大に目をつけ,多くの 企業が YouTube 等の動画配信サービスを使った事業(以後 YouTube 事業とする)を立ち上げているのをよく耳にする.しかし,この YouTube 事業は,多くのタスクが同時並行で進むマルチタスクなプロジェクトであることが多いため,スケジュール管理を容易に行えない.筆者が参加したYouTube事業立上げプロジェクトでも同様に,スケジュール管理が上手く出来ておらず,プロジェクトが思うように進まないことも少なくなかった.
本論文では,実際に 筆者が参加した YouTube 事業立上げプロジェクトで起こった問題やその解決策等を記す.
経験論文

[事例報告]
リスク構造を読み解いてアプローチするFRI(Factor-Risk-Influence)モデルによるリスク構造の見える化
安達賢二 (株式会社HBA)
要旨:
IT 関連プロジェクトのリスクマネジメントでは、メンバーのリスクのとらえ方がバラバラ、重要度と対応優先度の同一視、特定要員だけが対応しているなど、多くの問題が存在し、思うような効果が得られていないケースが散見される。
これらの問題を解決するために、リスク要因-リスク-影響の関係性を全体で構造化してアプローチする手法を提案する。当事例では、アプローチの詳細と期待効果、および適用上の注意事項を述べる。
事例報告(要旨)
事例報告(発表スライド)

[事例報告]
ケースメソッドを適用したプロジェクト・マネージャー育成の取り組み
木村良一 (産業技術大学院大学)
要旨:
本稿では,専門職大学院である東京都立産業技術大学院大学(以降,「本学」とする)における,模擬シナリオを用いたケースメソッドを適用したプロジェクト・マネージ ャー育成の取り組みについて報告する.
事例報告(要旨)
事例報告(発表スライド)

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QA/派生開発

論文奨励賞
[経験論文]
QA チームによる顧客要求の抽出・整理を支援する仕組みの構築
柏倉直樹 (株式会社ディー・エヌ・エー)
要旨:
エンターテイメントサービスにおいては利用時の品質のうち快感性や快適性を高めることが重要である.分業を前提とした開発の場合,快感性や快適性を高めるためにマーケティングチームなどの専門チームが顧客要求の獲得を担当する事が多い.一方でアジャイル開発などの非分業を前提とした開発の場合,プロダクトオーナーとQA が密接に協力して開発を進めるというプラクティスが提唱されるなど,これまでの QAの役割を超えてチームに貢献することが求められており,要求の獲得にも QA が貢献する必要性が生じてきていると考えた.そこで,顧客要求の獲得に不慣れな QA 担当者でもフレームワークに当てはめることで顧客要求を獲得でき,要件として取りまとめ,優先順位の提案まで含めてプロダクトオーナーへインプットする仕組みの構築に取り組んだ.なお今回の取り組みでは,QA 組織はエンドユーザーからのお問い合わせ情報にアクセスしやすいという特性を活かし,お問い合わせ情報をインプットとする仕組みを構築した.
経験論文

[事例報告]
プロダクトマネージャーが求めるアジャイル開発におけるソフトウェアテストのあり方と生産性向上への取り組み
坂東塁 (株式会社リクルートライフスタイル) , 羽鳥温子 (株式会社ProVision)
要旨:
大規模なサービスを過去 10 年以上にわたりウォーターフォールでプロダクト開発を進めていた我々の現場において,生産性の向上を目的として開発体制の一部でアジ ャイル開発を採用し,リーンアプローチを続けていた.しかし,その中でも小さいウォーターフォールのような体系は残ることが多く,プロダクトマネージャーから始まり,エンジニア,QA の各メンバー同士の役割も大きく変化することはなかったため,結果として生産性向上と逆効果となる可能性さえあった.
~ 中略 ~
本発表では,以上の取り組みの中でソフトウェアテストの中心を担う QA メンバーの役割をどのように再定義したのか,チームメンバーと新たな取り組みに対してデメリットやリスクを会話する中で,生産性向上に向けて最適な解を出せるように取り組んだ事例を紹介する.
事例報告(要旨)
事例報告(発表スライド)

[事例報告]
ネットワーク型データ構造によるSW部品の関係の可視化 ~SW部品選択におけるグラフDB の適用と評価~
川井隆之 (株式会社デンソー) , 小川雄太 (株式会社デンソー) , 水藤倫彰 (株式会社デンソー)
要旨:
排気センサーシステムは,複数の車両メーカーの様々な顧客要求に対して,ソフトウェア(SW)部品を組み合わせて対応している.SW 部品は多岐に渡り,対応する仕様や部品間の共有関係や選択時の制約が複雑に絡むため,熟練者が最適な部品を選択し一覧表で管理している.しかし,選択した SW 部品の妥当性を一覧表だけで確認することは非常に困難である.
本報告では,SW 部品の関係を,ネットワーク型データ構造を持つグラフ DB で表現し,部品選択結果の確認に必要な情報を可視化した.さらに,グラフ DB による SW部品関係の可視化は,部品選択以外の開発プロセスにおいても非常に有効に機能することを示した.
事例報告(要旨)
事例報告(発表スライド)

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教育

[事例報告]
産学官連携による岩手県域における「震災復興支援家族ロボット教室」
新井義和 (岩手県立大学) , 今井信太郎 (岩手県立大学) , 高田亨 (岩手県商工労働観光部) , 冨手壮一 (岩手県工業技術センター) , 秋田敏宏 (一関工業高等専門学校) , 江口かおる (有限会社イケハウス)
要旨:
東日本大震災を機に岩手県域を巡回する形で開始された「震災復興支援家族ロボット教室」の 8 年間の活動を振り返り,産官学連携の活動事例として報告する.
事例報告(要旨)
事例報告(発表スライド)

[研究論文]
インシデントリテラシ向上のための情報セキュリティゲームに導入教育を採用することの検証
廣瀬司 (放送大学) , 藤井辰雄 (放送大学) , 中谷多哉子 (放送大学)
要旨:
近年,個人情報漏えい事件の増加により,情報セキュリティ教育が重要視されている.これまで我々が開発したゲームは,学習者が体験したインシデントを説明するゲームと,インシデントの解決策を手持ちの札から選ぶゲームから構成されていた.しかし,インシデントを説明する際,会話の内容がインシデントに焦点を当てることができずに解決策を選ぶゲームのためのインシデント事例を十分に収集できないという課題があった.この課題を解決するために,一つ目のゲームを行う前に,インシデントの導入教育を行うことにした.本研究は,ゲームの前に情報セキュリティ教育を導入教育として採用することにより,ゲームの有効性が向上したかを検証した.結果,導入教育を行ったことで,知識が増え,ゲームでの話題が情報セキュリティに関するインシデントに焦点が当たったといえる.したがって,インシデントリテラシ向上のための情報セキュリティ教育ゲームに導入教育を採用することは有効であった.
研究論文

[事例報告]
コミュニケーション改善を目的とした論文形(かた)研修
阪井誠 (株式会社SRA)
要旨:
コミュニケーション改善を目的とした論文形研修の事例を報告する.ソフトウェア開発においてコミュニケーションは重要な問題である.本事例では,開発者の論理的思考力が向上すれば,齟齬が生じにくくなると仮説を立て,論文形のワークショップを実施した.受講者の感想を集計した結果,8 名中 6 名が仕事に役立つ,2 名が有効だがさらに訓練が必要であると回答し,研修の有効性が確認できた.
事例報告(要旨)
事例報告(発表スライド)

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Future Presentation(1)

[Future Presentation]
ITシステムの現行ソフトウェアにおける技術的負債可視化の重要性について
増井和也 (ソフトウェア・メインテンス研究会) , 馬場辰男 (ソフトウェア・メインテンス研究会)
要旨:
多様な利用分野向け IT システムで,稼働中ソフトウェアの不具合に起因する障害が多発している 12)-15)。その原因の一つと考えられるものに,IT システムを構成する現行ソフトウェア(アプリケーシ ョンやインフラ等のソフトウェア)の老朽化(レガシ化)が指摘されている 16)17)。当該老朽化の状態を可視化する研究も世界のソフトウェア科学者により行われている。特に老朽化を示す指標の一つである「技術的負債(Technical Debt)1)」の研究は,比較的盛んな分野一つのようである 2)-6)。
ただ,日本の企業等が所有する IT システムは,日本独自の制度等から,技術的負債(以下 TD と略す)の実態把握を外部から客観的に可視化させることは容易ではない状況がある。本稿では,TD 可視化困難性(IT 資産価値低下可視化困難性)について分析し, 将来に向けてなすべき施策(法令規制,適正なソフトウェア保守・品質管理体制)について提言する。
Future Presentation

[Future Presentation]
コミュニティ型チーム活動の進化 ~ COVID-19 対策サイト開発から学ぶ~
松尾谷徹 (有限会社デバッグ工学研究所) , 増田礼子 (フェリカネットワークス株式会社)
要旨:
このFuture Presentation (FP) は,IT 技術者の働き方やモチベーションについての提案と,その根拠となった事例の説明です.事例は,従来の働き方とは異なる形態で驚異的な成果を示した「COVID-19 対策サイト開発」です.従来の働き方とは,企業や職場に閉じたクローズド型です.異なる形態とは,開発を受注した企業がOpen Souce Software (OSS) としてGitHub のオープン・コミュニティを活用したことです.ここでは,クローズド開発とオープン・コミュニティ開発を比較しました.
成果の大きな差は,開発や修正のスピードに現れており,二桁ほどの差がありました.一方,生産性やコストについては,オープン・コミュニティが参加者に対価を支払うことがないので,計測すらありません.職場などのリアルな環境での活動ではないこともあり,階層型の管理や予実管理は存在せず,自律管理で運用されていました.一番の差は,働く技術者のモチベーションです,クロースド型の職場は,ロイヤリティやチーム結束力がモチベーションです.オープン・コミュニティでは,存在承認に近いものがモチベーションになっていると推測されます.そのモチベーション源は雇用者や仲間からではなく,外部から与えられていることに注目して,この提案を行います.
Future Presentation

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形式仕様/モデル検査

[研究論文]
探索的仕様記述のための履歴ツールの提案と実装
小田朋宏 (株式会社SRA) , 張漢明 (南山大学) , 山本恭裕 (公立はこだて未来大学) , 中小路久美代 (公立はこだて未来大学) , 荒木啓二郎 (熊本高等専門学校)
要旨:
フトウェア開発の過程を困難なものとしている一つの要因として,複雑なものを対象にした試行錯誤が挙げられる.ソフトウェアシステムを作成する過程において,複雑な対象ドメインやソフトウェアシステム自身への理解を探索的に深め,得られた知見を整理し,ドキュメントとして記録することが求められる.ソフトウェア開発における履歴の管理と整理は,ソフトウェア工学の古くからの課題であり,多くのツールが実現されて広く利用されている.本論文では,ソフトウェア開発における試行錯誤の中でも,形式仕様記述における個人作業の中での探索的な作業に注目して,仕様記述の編集や表現式の評価実行のような細粒度の履歴の整理のための手法を提案する.そして,実行可能な仕様記述言語 VDM-SL での仕様記述における探索的試行を記録し,後に仕様記述者自身がその過程を整理し,記録するためのツールを提案し,その実装を紹介する.
研究論文

[研究論文]
行列計算に基づくモデル検査技術
熊澤努 (株式会社SRA) , 小田朋宏 (株式会社SRA)
要旨:
モデル検査は,状態遷移系として与えられたソフトウェアのモデルが,望ましい性質を満たすことを形式的に検証する技術である.状態遷移系は,ソフトウェアシステムの振る舞いの記述に適しており,有向グラフで表現することが多い.有向グラフは隣接行列を使って表すことができるので,状態遷移系もまた行列で記述することが可能である.行列は,機械学習などの様々な分野での標準的なツールとして広く利用されている.実用上, GPU や分散環境上で大規模な行列の計算が扱われることも多く,演算のための様々なライブラリが整備されている.本論文では,行列計算を使用したモデル検査技法を提案する.提案する検査技法は,並行システムの検証を対象として,モデル検査の主要なアルゴリズムを行列計算で構成する.今後 GPU を使った高速化,高性能化が期待できる.本手法の実現可能性を評価するために,試作プログラムを作成してデッドロック検出問題に適用し,実行性能については改善が必要ではあるものの,全ての事例についてデッドロックが検出できることを確認した.
研究論文

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Future Presentation(2)

[Future Presentation]
デジタル変革を推進する上での課題
山本修一郎 (名古屋大学)
要旨:
本稿ではデジタル変革(Digital Transformation, DX)を日本企業が推進する上での課題を提示する.経産省が 公開したDX推進指標などの限界を指摘するとともに,日本のユーザ企業とベンダ企業に求められる新しい関係構築の必要性について展望する.
Future Presentation

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