ソフトウェア・シンポジウム 2020 (オンライン開催)

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SSでは、例年、最優秀論文賞、論文奨励賞、最優秀発表賞(ベストスピーカー賞)の3つの表彰を行っています。今回の受賞論文と著者は次のとおりです。

■最優秀論文賞

[研究論文] 要求仕様の誤解釈を検出する Domain Word Modeling の提案
柏原 一雄(株式会社デンソークリエイト),不破 慎之介(株式会社デンソークリエイト),石川 冬樹(国立情報学研究所),長井 亘(テックスエンジソリューションズ株式会社),林 香織(株式会社デンソークリエイト),栗田 太郎(ソニー株式会社)
要旨:
 仕様が自然言語のような曖昧さを含む記法で記述されている場合,仕様の誤解釈を誘発しやすい.実際に我々の組織では,「抽象的に表現された用語」を「不足している前提知識」で解釈することにより,誤解釈が発生していた.誤解釈の可能性のある用語を検出するために,用語の解釈を可視化する手法「Domain Word Modeling」を考案した.「Domain Word Modeling」は,導入のしやすさを重視した手法である.実験で,実開発において定義された要求仕様を入力として,考案手法を実行し,効果を確認した.
研究論文

■論文奨励賞

[経験論文] QA チームによる顧客要求の抽出・整理を支援する仕組みの構築
柏倉 直樹(株式会社 ディー・エヌ・エー)
要旨:
 エンターテイメントサービスにおいては利用時の品質のうち快感性や快適性を高めることが重要である.分業を前提とした開発の場合,快感性や快適性を高めるためにマーケティングチームなどの専門チームが顧客要求の獲得を担当する事が多い.一方でアジャイル開発などの非分業を前提とした開発の場合,プロダクトオーナーとQAが密接に協力して開発を進めるというプラクティスが提唱されるなど,これまでのQAの役割を超えてチームに貢献することが求められており,要求の獲得にもQAが貢献する必要性が生じてきていると考えた.そこで,顧客要求の獲得に不慣れなQA担当者でもフレームワークに当てはめることで顧客要求を獲得でき,要件として取りまとめ,優先順位の提案まで含めてプロダクトオーナーへインプットする仕組みの構築に取り組んだ.なお今回の取り組みでは,QA組織はエンドユーザーからのお問い合わせ情報にアクセスしやすいという特性を活かし,お問い合わせ情報をインプットとする仕組みを構築した.
経験論文


[研究論文] 多様なステークホルダの満足度に着目したシステムの安全性・セキュリティ要件の抽出と検証
柳原 靖司(ブラザー工業株式会社),石川 冬樹(国立情報学研究所),吉田 邦雄(オムロン株式会社),栗田 太郎(ソニー株式会社)
要旨:
 本論文では,ステークホルダの多様な視点を取り入れながら客観的かつ系統的にシステムの安全性・セキュリティ要件の抽出と検証を行う手段として,SSMS法(Safety and Security requirements analysis method with Multiple stakeholder perspectives on STAMP/STPA)を提案する.近年,AI/IoTに代表されるようにソフトウェアが大規模・複雑化する中で,抜け漏れなくシステムの安全性・セキュリティ要件を抽出し,かつステークホルダの間で合意形成することが難しくなっている.SSMS法を用いることで,対象ドメインの知識を十分に有してなくても複雑なシステムのハザードと脅威に対する対策群を実用的な量で獲得し,要件の満足度に関する評価指標で定量的に評価することができる.

This paper presents a safety and security requirements analysis method with multiple stakeholder perspectives on STAMP/STPA called SSMS Method. In recent years, as software has become largerand more complex, as represented by AI/IoT, it has become difficult to extract safety requirements comprehensively and to form consensusamong stakeholders adequately. SSMS Method facilitates developers to acquire safety and security requirements without sufficient knowledge of the target domain and to evaluate them quantitatively based on their assent.

研究論文

著者のみなさま,おめでとうございます!