ソフトウェア・シンポジウム 2022 in 盛岡

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SSでは,例年,最優秀論文賞,論文奨励賞,最優秀発表賞(ベストスピーカー賞)の3つの表彰を行っています.今回の受賞論文と著者は次のとおりです.

■最優秀論文賞

[経験論文]
深層学習における正則化へのドロップアウトデザインの適用
熊澤 努 (SRA),地嵜 頌子 (大阪工業大学),中川 智之 (東京理科大学),室井 浩明 (ヱヂリウム株式会社),渡邉 卓也 (ヱヂリウム株式会社)
要旨:
深層ニューラルネットワークの汎化性能を向上させる正則化法に,学習時に一部のノードだけを活性化するドロップアウト法が知られている.ドロップアウト法が活性化するノードを無作為に選択する技法なのに対して,ノードと重みを1エポックの訓練で均一に選択する,ドロップアウトデザインと呼ばれる組合せ構造が提案されている.しかしながら,正則化の効果については不明点が多く,実験を通じて解明されることが望まれてきた.本論文では,ドロップアウトデザインの性質を明らかするために,ドロップアウトデザインを用いた正則化法を多層パーセプトロンに適用した.4種類のネットワーク構成について,画像分類問題の精度と損失を評価する実験を行い,すべてのネットワークについてドロップアウト法と同程度の汎化性能を示すことを確認した.一方で,ドロップアウトデザインに固有の特徴的な結果は観察されなかった.以上の成果は,ドロップアウト法とドロップアウトデザインをより深く理解するための手掛かりを今後の研究に提供することが期待される.

経験論文

■論文奨励賞

[研究論文]
ソースコードコメントに着目した不確かさとソフトウェア品質の関係調査
渡邉 紘矢,崔 恩瀞,水野 修 (京都工芸繊維大学)
要旨:
ソフトウェア開発中には開発者の知識不足により,既存プロジェクトのソースコードを十分に理解出来ないことがある.不確かさによるソースコードの複雑化は,ソフトウェアの品質や保守性に影響を与えている可能性があるが,この実証研究はまだ行われていない.そこで,本研究では,ソースコードコメントに存在する不確かさに着目し,不確かさによってソフトウェア品質にどのような影響があるかを調査した.具体的には,まず,ソースコードや設計に問題がある可能性を示す指標であるコードスメルと,ソースコードの品質メトリクスとして利用される循環的複雑度とクラス結合度を用いて,不確かさを表すキーワードをコメントに持つソースコードは品質が低いか調査した.調査の結果,不確かさはコードスメルの数への影響は見られないが,不確かさの影響を受けやすいコードスメルがあることがわかった.また,不確かさがあることで,C/C++,Pythonでは循環的複雑度が高く,C++,Pythonではクラス結合度が高くなることがわかった.

研究論文

■最優秀発表賞

[経験論文]
COTS利用プロジェクトへのGSNの適用
田中 康 (有限会社ケイプラス・ソリューションズ,奈良先端科学技術大学院大学)
要旨:
業務改革や新サービス開発,そして,ITシステムの新規開発およびシステム刷新プロジェクトのコスト超過や有用性実現の失敗を解決するために,業務プロセス設計主導によるシステム要件定義の取り組みを行なっている[1].しかし,業務プロセス設計はユーザ企業の参画含め,現状の業務プロセスを分析し,改善のための業務プロセスを再設計するといった一連の過程を踏む必要があり,期間とコストがかかることが実施を困難にする要因のひとつであった.
業務での活用思想が明確なCOTS(Commercial Off-The-Shelf)製品を適用するプロジェクトでは,業務プロセス設計フェーズにGSN(Goal Structuring Notation)[2]を適用することによって,現状プロセスのモデル化と分析の過程を踏まずに,あるべき業務プロセスをトップダウンに設計することができ,さらに,実働,期間共に大幅な短縮を実現することができた.

経験論文

著者のみなさま,おめでとうございます!