ソフトウェア・シンポジウム 2016 表彰論文

SSでは,毎年,最優秀論文賞,論文奨励賞,最優秀発表賞の3つを表彰しています.今回の受賞論文と著者は次のとおりです

最優秀論文賞

[研究論文]VDM-SL仕様からのSmalltalkプログラムの自動生成
小田朋宏(SRA),荒木啓二郎(九州大学)
要旨:
VDM-SL は実行可能なサブセットを持ち,複数のインタプリタ実装が提供されている形式的仕様記述言語である.本稿は,Smalltalk 環境上に構築された ViennaTalk ライブラリに実装された,VDM-SL による実行可能仕様からのSmalltalk プログラムの自動生成器の実装を説明し,生成されたSmalltalk ソースコードの性能評価を示す.
研究論文(pdf:110KB)

[経験論文]大量の状態とイベントを持つプログラムの自動解析とテスト ~ 想定外のイベントを自動テストする ~
下村翔(デンソー),古畑慶次(デンソー技研センター),松尾谷徹(デバッグ工学研究所)
要旨:
画面遷移を含むGUI アプリケーションプログラムのテストを組合せ論理で取り扱うことは,原理的に難しく,順序論理と呼ばれる状態とイベントの時系列を考慮する必要がある.ブラックボックス的な順序論理の組合せ数は膨大になるため,状態やイベントを厳密にモデル化する必要があるが,現場では実践できていない.ここでは,実際のプログラムから状態とイベントを探索し,モデル化を行う.テストは,得られたモデルから時系列の各ノードに対し,イベントの集合,即ちイベントハンドラが実在するイベントを網羅的にテストする.これにより,ある状態において想定外のイベントに対するテストを自動化できる.テストの効率化のために,SMT ソルバのZ3 を用いて不要なテストケースを削減した.提案手法を過去に開発した試作ソフトに適用し,今まで見つかっていなかった想定外のイベントによる不具合を見つけることができた.
経験論文(pdf:1,836KB)

論文奨励賞

[経験論文]性能トラブル解決の勘所
鈴木勝彦(ソフトウェア・メインテナンス研究会/株式会社日立ソリューションズ)
要旨:
ソフトウェア保守では,性能トラブルが発生すると原因究明までに時間がかかることが多い.これは,性能トラブル発生時の調査手順が確立されておらず,場当たり的で試行錯誤しながらの調査となっているためである.また,性能トラブルの原因としてどのような要素があるかなどが体系的にまとめられていないことにも起因している.

本研究では,性能トラブルの要素などを4W1H の概念で体系化し,実際の性能トラブル発生時の調査の勘所をまとめた.性能トラブルでお悩みの方々のお役に立つことができれば幸いである.
経験論文(pdf:1,385KB)

[経験論文]週報のテキストマイニングによるリスク対応キーワード抽出
野々村琢人,安村明子,弓倉陽介(東芝)
要旨:
ソフトウェアの研究開発管理において,週報などの報告書による情報は重要であるが,以下の課題がある.部門内のチームリーダによる集約された週報では情報が欠落してしまう.逆に部門メンバー全員の週報は膨大で冗長な表現も多く,短時間での確認が困難である.今回,メンバー個人の週報および部門全員の週報に対してテキストマイニングを行い,リスク対応に必要なキーワードを抽出できることを確認した.
経験論文(pdf:708KB)

最優秀発表賞

[経験論文]ゲーミフィケーションを用いた探索的テストの効果報告
根本紀之(東京エレクトロン)
要旨:
テスト仕様書ベースのテストが好きな開発者は少ない.もちろん例外はあるだろうが,一般的には少ないと言って過言ではないであろう.理由は創造的な活動ではない,テスト仕様書の作成に時間がかかる,など様々である.

本報告では,テスト仕様書ベースのテストの一部を,探索的テストに変え,さらにゲーミフィケーションの要素を入れることで競争争原理が働き,バグを探すことが面白くなり,通常のテスト仕様書ベースのテストより多くのバグを発見できた結果とその効果を報告する.さらにはテスト実行前に戦略立案,テスト実行後にふりかえりを行うことで,バグの効果的に見つける方法を共有する取り組みの効果を紹介する.
経験論文(pdf:387KB)

著者のみなさま,おめでとうございます!