ソフトウェア・シンポジウム 2015 ワーキンググループ

ソフトウェア・シンポジウム 2015 で 10 年目を迎えるワーキンググループでの活動は,ソフトウェア技術にまつわるさまざまなテーマや課題に関する発表,議論を行うことで,参加者やグループがそれぞれの方向性を見いだしていくための場です.

WG名前
1 (DC) D-Case
2 (SS) ソフトウェアと社会
3 (ED) ソフトウェア技術者はどうしたら育つか?
4 (MT) ソフトウェア保守の覚醒
5 (TA) チーム活動の成果を眺める ~人材系のためのメトリクスと分析ツール入門~
6 (RV) レビュー
7 (EN) 開発手法・開発環境の現場導入の現実
8 (FM) 形式手法 VDM の例題と実践
9 (TT) 電脳テスト道具の活用: Concolic/Symbolic Testing ~回帰テスト,派生開発のテストへの活用~
10 (SD) 品質要求を USDM で表現してみよう!
11 (RQ) 要求抽出のために: ゴール分解の実践
(順序不同,英字二文字は略称)

WG1: 「D-Case」

リーダ: 山本 修一郎 (名古屋大学)

概要:

機能安全の取り組みの一環として保証ケースや安全性ケースの作成が組み込みシステム開発分野で進んでいます.

一方で,わが国では,HAZOP や FTA,FMEA などの既存の手法とこれらの手法との差異についてまだ理解が進んでいないため,具体的な開発手法として確立するまでにはいたっていないという現実があります.

このため,本 WG では,保証ケース (アシュアランスケース) や安全性ケースを導入する上での実践的な課題について,企業エンジニアと,研究者の交流の場を提供することにより,参加者の現状の課題を共有するとともに,今後の課題解決に向けた新たな方向性について議論します.

参加の条件:

とくになし.

運営方法・備考:

特記事項なし.

メーリングリストのアドレス: ss2015-dc @ sea.jp (ログを取得する方法については,こちらをご参照ください.)

WG2: 「ソフトウェアと社会」

リーダ: 岸田 孝一 (SRA)

概要:

さまざまなかたちでのコンピュータ機器やインターネットの普及に伴って生じてきたソフトウェア技術と社会との間の軋轢について,1999 年にドイツで開かれたワークショップの報告書 "Social Thinking - Software Practice" (※) を題材に,多角的な視点から討論を行う.

同書は 5 部構成で 21 編の論文が載っているが,扱われている問題が極めて広範囲なので,今回の WG では,パラダイム変換を論じた第 1 部 "Deconstructing (脱構築)" 所収の 4 編の論文だけを討論の対象として考えることにしたい.

※ この本は Amazon ほかの書店で購入可能です.入手が困難な方はリーダまでご連絡ください.

参加の条件:

上にあげた参考文献の第一部 "Deconstracting" 所収の 4 つの論文を読み,その中で 自分がもっとも 興味を惹かれた論文についての感想または批評を Position Statement として事前に提出すること.

運営方法・備考:

参加者全員がそれぞれの Position Statement を発表し,全員で討論する.

メーリングリストのアドレス: ss2015-ss @ sea.jp (ログを取得する方法については,こちらをご参照ください.)

WG3: 「ソフトウェア技術者はどうしたら育つか?」

リーダ: 米島 博司 (パフォーマンス・インプルーブメント・アソシエイツ),諸岡 隆司 (中電シーティーアイ)

概要:

ソフトウェア技術者が足りない! 若手の技術者育成が追いつかない!といった悩みをお持ちではありませんか?

ソフトウェア技術者の不足がいよいよのっぴきならない状況になりつつあると同時に,技術領域Web,ゲーム系へと広がり,プラットフォームもPCからモバイル端末の比重が高くなってきています.単に技術者の人数的な問題ではなく質的にも技術領域の変化についても何らかの抜本的な対策を講じる必要が早急に求められています.

ソフトウェア業界における生産性の向上は,他の業界に比べても圧倒的に「人」に依存する比率が高いのは言うまでもありません.

Design for Design Workの基盤は生産の仕組みであり,それを支えるのが「人」です.教育は生産性向上に直結して初めてその成果を見ることができます.

当ワーキンググループでは,そうした状況を踏まえつつ,教育・研修の場,および職場や今後の改善の参考にすることを目的とします.

ソフトウェア技術者の人材育成,教育に携わる方,大学や専門学校において技術教育を担当される方など,広く技術教育に携わっておられる皆様の参加をお待ちしております.

参加の条件:

ポジションペーパー (スライド 1 ~ 2 枚程度) の提出を必須とする.

運営方法・備考:

基本的に参加者はスライド一枚程度のポジションペーパーを 5 月末までに提出する.基本的に参加者自身の事例や研究を持ち寄って発表し,参加者全員で意見交換,議論によって相互研鑽を行う.

メーリングリストのアドレス: ss2015-ed @ sea.jp (ログを取得する方法については,こちらをご参照ください.)

WG4: 「ソフトウェア保守の覚醒」

リーダ: 高橋 芳広 (ソフトウェア・メインテナンス研究会 (SERC))

概要:

実は,あなたもソフトウェア保守技術者だったのだ!

これを読んでどう思われますか?

私たち SERC は,ソフトウェア保守に関する研究を行う団体で,過去の SS でも WG を開催して来ました.

そこでは,「保守」だと意識せず保守をやっていた (うまく行かなかったのはその為かも?).保守で困っていたけどそれを研究する団体があったなんて知らなかった...

等々,些かショッキングな話を幾度となく耳にしました.

しかしながら,私たちは,現在構築されている情報システムの大半は,保守技術が勘所となっていると考えているのです.そう,あなたが行っていた仕事の大半は,実は保守だったのです.

今,あなたはソフトウェア保守技術者として覚醒しました!

時として愚痴になりがちな「保守」に関する話題を前向きに,課題の解決方法やソフトウェア保守技術の動向等を建設的に討論したいと思います.

是非ともご参加ください!

参加の条件:

どなたでも (ポジションペーパを提出して頂きます) .

運営方法・備考:

事前にテーマを募り討論します.

メーリングリストのアドレス: ss2015-mt @ sea.jp (ログを取得する方法については,こちらをご参照ください.)

WG5: 「チーム活動の成果を眺める ~人材系のためのメトリクスと分析ツール入門~」

リーダ: 森本 千佳子 (東京工業大学),増田 礼子 (フェリカネットワークス),山川 紘明 (デンソーテクノ),古畑 慶次 (デンソー技研センター)

概要:

人材育成やチームビルディングに携わる者にとって大きな悩みは,会社では「成果を示せ!」 論文を書くと「定量的に示せ!」など,とても難しい要求を突き付けらることではないでしょうか.

人の成長を数字で表現することは人材マネジメントの専門分野でも難しいテーマであり,様々な評価モデルとそれを実際に測る (1) 調査紙など測り方の課題と,(2)統計分析など評価方法の課題があります.

この WG では,人材育成やチームビルディングなどの成果を測り検証するために必要な質問紙や,その分析について,入門的な範囲で一緒に学び議論を行います.

参加の条件:

人材系活動を実践している (したい) + その評価で困っている (tool 環境や統計が苦手 + SPSS が買えない等).

運営方法・備考:

前半は,難しい理論や数式を使わず,統計ツール (RStudio) を使いながら分析に慣れるワークをします.PC を持参いただき,用意したサーバーに接続し,事例を使って,分析体験しながら進めます.後半は,実践事例を中心に討論を行います.

進め方

・調査紙や分析の動向解説

・事例を例題に試行環境での演習

・実践事例と応用に関する討論

PC を持参ください

メーリングリストのアドレス: ss2015-ta @ sea.jp (ログを取得する方法については,こちらをご参照ください.)

WG6: 「レビュー」

リーダ: 安達 賢二 (HBA),栗田 太郎 (ソニー,フェリカネットワークス)

概要:

ソフトウェアレビューはソフトウェア品質や生産性向上に有効であると認識されている一方で,その効果を実感している方が意外と少ないのが実態ではないでしょうか.

このワーキンググループでは,レビューの問題点と解決の方向性や,主要な方策の一つになりうる"レビュー観点設定"のあり方や効果を議論・考察し,共有します.

参加の条件:

自組織のレビューを改善したいと考えていることが条件です.

自組織のレビューの問題点と悩みを A4 版 1 ページのポジションペーパにまとめ,事前に提出して頂きます.

運営方法・備考:

・レビューの問題点と解決の方向性共有

・レビューワーク① アドホックレビューと考察

・レビューワーク② レビュー観点設定を中心としたレビュープランニング

・ワーク②結果の共有と考察

(さらに時間があれば)

・レビューワーク③ レビュープランに基づくレビュー実践

・結果考察

メーリングリストのアドレス: ss2015-rv @ sea.jp (ログを取得する方法については,こちらをご参照ください.)

WG7: 「開発手法・開発環境の現場導入の現実」

リーダ: 小林修,阪井誠 (SRA)

概要:

現在,ソフトウェア開発に関わる様々な手法やツールの導入が,現場で活発にすすめられているが,その実践は必ずしも容易ではない.また,困難の原因を当事者自らが的確に分析・判断することも難しい.

そこで,本ワーキンググループでは,手法・環境を現場に導入した経験 (苦労話・成功談・失敗談) に基づいて議論し,導入での苦心・工夫・教訓を共有する.

キーワード: 自動化,マネージメントツール,開発環境,開発プロセス

参加の条件:

ポジションペーパ提出

運営方法・備考:

参加者各自の発表 (事例・経験に基づく) とディスカッション

メーリングリストのアドレス: ss2015-en @ sea.jp (ログを取得する方法については,こちらをご参照ください.)

WG8: 「形式手法 VDM の例題と実践」

リーダ: 田中美穂 (アートシステム),宮本陽子 (メタテクノ)

概要:

ソフトウェア開発現場では,要求や仕様の曖昧さを早期に発見し,品質の高いソフトウェアを効率よく組織的に開発する手法が求められています.本ワーキンググループでは,厳密な仕様記述のための手法として実績のある形式手法VDMをとりあげ,チュートリアル形式での解説と,技術交流を行いたいと思います.

具体的には,事前にVDM++で書いた仕様モデルの記述例を配布します.それを元に,1日目は,VDMの概説と記述例を読むことができるようになるためのグループレッスンを行います.2日目には,VDM経験者同士のノウハウや教育事例の共有を行います.初心者だけではなく,経験者にとっても振り返りや交流の場にすることを目指しています.

参加の条件:

ポジションペーパの提出依頼 (以下の内容について記載をお願いします)

・VDM記述入門者:

  形式手法やVDMに興味を持ったきっかけ.

  自然言語で仕様を記述する際の工夫や課題.

・VDM記述経験者: 形式手法やVDMとの関わり.

  どのように学び教わったか,仕様検討法や記述法,工夫点.

  ※正式な依頼と内容の詳細については,事前にMLでお知らせします.

運営方法・備考:

事前MLにて,ポジションペーパーの提出依頼と記述例を配布.

1 日目: 自己紹介と,VDMを読むことができるようになるためのチュートリアル.

  VDMの概説と,事前に配布した記述例を説明.

  各自が抱いた疑問点や問題点も共有,解決しながら読み進めます.

2 日目: VDM経験者同士のノウハウや教育事例の共有.

  ポジションペーパを元に,経験者からのお話を伺います.

メーリングリストのアドレス: ss2015-fm @ sea.jp (ログを取得する方法については,こちらをご参照ください.)

WG9: 「電脳テスト道具の活用: Concolic/Symbolic Testing ~回帰テスト,派生開発のテストへの活用~」

リーダ: 松尾谷 徹 (デバッグ工学研究所),植月 啓次 (フェリカネットワークス),矢野 恵生 (デンソー),蛸島 昭之 (デンソー)

概要:

近年,コンピュータを使った探索技術は飛躍的に進歩し,将棋の世界だけでなく,プログラム解析においても大きな成果が報告されている.抽象構文木やソルバーを使い,迷路のようなプログラムの制御構造をヒューリスティックに解析できるツールの多くは2008年頃からオープン化されており,技術者は何時でもそれを利用できます.ビジネスにおいても静的解析におけるコベリティ社やセキュリティ関連企業は,この種の技術の利用技術を開発し成功している.

一方,国内における利用技術は非常に低調であり,ほとんど報告されていません.世界でも屈指のソフトウェア市場を持ち,長期に渡り工数当たりの生産性が低迷し,自動化が叫ばれている業界としては,とても不思議な状況です.

このWGでは,この問題の原因に自動化に対する態度に問題があると考え,解決に向け試行的な取り組みを行います.問題と考える自動化への態度とは,既存のやり方を標準的なプロセスとしてツールに指示す自動化の考え方です.ルーツは製造業における自動化の成功体験ですが,ソフトでは誰も成功を体験していません.一方,ヒューリステックな解析ツールは,使う技術者の探索行為と連携し高度な操作ノウハウなど利用技術が必要です.サルでも使えるツールと区別するためここでは電脳道具と呼び区別します.

国内で形式手法やモデル検査など電脳道具の活用が低調なのは,その操作ノウハウを取得する機会が少ないと考えています.現場のソフト技術者に習得の機会が無い原因は,電脳道具を動作させ試行する環境構築が難しいことに一因があります.linux上で複雑な依存関係を解決しないと,例題すら試すことが出来ません.このWGでは,あらかじめサーバーに環境を準備し,参加者はPCのブラウザからConcolic testing (CREST/Cil)やSymbolic testing(KLEE/LLVM)などの電脳道具を実際に使いながら,これらの技術の紹介と応用について討論します.今回は,実際に使っているメンバーに参加してもらい,派生開発のテスト,回帰テストを主なテーマにする予定です.

参加の条件:

自分で使って確かめる行動力のある方,現場の技術者向け.

運営方法・備考:

・試行環境での例題を動かしてみる

・実際に使っている現場の事例説明

・応用に関する討論

メーリングリストのアドレス: ss2015-tt @ sea.jp (ログを取得する方法については,こちらをご参照ください.)

WG10: 「品質要求を USDM で表現してみよう!」

リーダ: 清水 吉男 (システムクリエイツ,派生開発推進協議会),松井 淳 (コベルコシステム)

概要:

要求仕様書は "作って欲しいこと" が書かれた文書です.当然,機能要求の他に「品質要求」も含まれます.その中でも,作り方に関する品質要求は,確実に設計過程の中で「織り込む」必要がありますが,皆さんの現場では要求仕様書に保守性のような品質要求は,設計に織り込むことができる程度に記述されていますか? どう書けばいいのか良くわからないということはありませんか? 品質要求を仕様として表現するのに困っていませんか?

「USDM」は要求仕様の表記法として考案されたものですが,要求と仕様の階層構造を使うことで作り方の品質要求も表現できます.また「USDM」だからできる表現もあります.WGで一緒に考えてみませんか.

参加の条件:

ポジションペーパーに「品質要求の要求仕様への記述の様子」「品質要求に対する思い」や「品質要求との格闘の様子」などを A4 1 枚にまとめて提出していただく当日の議論が進みます.

運営方法・備考:

USDM に於ける品質要求の考え方を知っていただき,その上でいくつかの品質特性を取り上げて,ディスカッションの中で品質要求の定義や要求と仕様の形に表現してみます.いくつかの事例が出れば,あとは持ち帰って応用して戴けると思います.

メーリングリストのアドレス: ss2015-sd @ sea.jp (ログを取得する方法については,こちらをご参照ください.)

WG11: 「要求抽出のために: ゴール分解の実践」

リーダ: 中谷 多哉子 (放送大学),岡野 道太郎 (筑波大学)

概要:

ゴール指向分析は目的手段展開を適用する手法である.

しかし,実際のゴール分解では,状態分解,オブジェクトの構造分解,プロセス分解などが複合している.そのため,最近では,ゴール分解のための戦略を提議してモデルを構築する方法も提案されている.このように,様々な工夫が提案されているが,未だに,ゴールモデルという成果物の品質を高めることは容易ではない.

そこで本ワーキンググループでは,ゴール分解の駆動原理に,関心事を変化させるための質問を用いる方法を適用し,実際に例題を解くことで,それの有効性を検証する.

参加の条件:

ゴール指向分析に対する経験,知識,疑問などを A4 で 1 ページ以内にまとめて提出してください.特に審査を行わず,提出によって参加表明を頂いたとみなします.

運営方法・備考:

一般的なゴール指向分析の紹介を行った後,実際にゴール指向分析手法を用いて例題を解いてみます.その結果を共有することで,ゴール指向分析手法を適用するために必要な技術的な課題と解決策について討論を行います.

模造紙とポストイットを用いたアナログメディアを用いた作業が中心です.

メーリングリストのアドレス: ss2015-rq @ sea.jp (ログを取得する方法については,こちらをご参照ください.)

メーリングリストのログを取得する方法

メーリングリストのアドレスの名前の末尾に "-ctl" を付加してこれを宛先として,メールの本文の先頭を get 1-last としたメールを送ると,ログを取得することができます.

例えば,WG1 (「D-Case」) の場合,メーリングリストのアドレスが ss2015-dc @ sea.jp ですから,宛先は ss2015-dc-ctl @ sea.jp,本文は get 1-last となります.

このときに,メーリングリストに登録されたメールアドレスからしか取得できませんので,ご注意ください.

get の代わりに help を送ると,メーリングリストの使い方が返送されます.