SEA関西−教育分科会ジョイントフォーラム
Joint Forum with SEA Kansai

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第7回 SEA関西支部・教育分科会ジョイントフォーラム2003 報告
「教育システムの本当のニーズと本物の実現」

■ 日時: 2003年7月25日(金)13:30-17:00

■ 場所: 大阪市立大学文化交流センター 大セミナー室(大阪駅前第2ビル 6階)

■ プログラム:
13:00-13:30 受付

13:40-14:10 鈴木重昭・竹中ナミ((社福)プロップステーション)、中野秀男(大阪市立大学)

「遠隔学習にかけるPropstationの思い」

障害を持つ人の自立と社会参加の支援にコンピュータを活用してきました。ビル・ゲイツまで会ってしまう大胆な取り組みの中で遠隔学習の最新状況を紹介します。

14:10-14:40 中野秀男(大阪市立大学)

「大阪市大創造都市研究科と遠隔学習環境」

今年4月に新設された主に社会人向けの創造都市研究科を紹介し、新設に合わせて強化された梅田サテライトの遠隔学習施設を案内します。施設はフォーラム会場と同じ建物内です。


14:40-15:00 堀内淑子(日本ユニシスラーニング)

「UNIKIDSツールによる教育設計支援」

オーサリングツールや教育管理システムが普及しつつありますが、教育設計支援ツールUNIKIDSは教育デザイナの作業を知りつくしたツールです。UNIKIDSツールの発展の経過を発表します。


15:00-15:20 戸谷香織(インフィス社)

「教育システム学の留学体験と商売体験」


インディアナ大学教育システム学修士課程で充実した留学体験をし、帰国後にパフォーマンス・コンサルタントとしてデビューしました。その体験や構想を発表します。

       
15:40-17:00 パネル討論 「教育システムの本当のニーズと本物の実現」

パネリスト: 鈴木 重昭、中野 秀男、堀内 淑子、戸谷 香織
司   会: 君島 浩(防衛庁海上幕僚監部)


教育システムは課程、受講者、教員、施設などで構成されます。前述の四人の発表者をパネラにして、並みのシステムやツールや教育方法ではなぜ満足しなかったのか、そして今後の成算はどうか。会場の参加者の声に沿って議論を展開します。

□□□□□□□□□□□□□□  パネル討論記録  □□□□□□□□□□□□□□
(メモ書きをもとにしているので、原文とは少し違います)

君島浩(防衛庁海上幕僚監部):それではパネル討論を始めます。視聴者の方でも発表者の方でもよいのですが、何か質問はありませんか。

米島博司(NECインターナショナルトレーニング):鈴木さんに伺います。遠隔教育を進めていて特に困ることは何ですか。

鈴木重昭(プロップステーション):教育だけをやっている団体ではないので、まず行き場がないことが困ります。チャレンジド(障害者)の就職率はほぼ0%です。福祉用の作業所で働くか、家庭で働いている人がほとんどです。教える人材もチャレンジドなんですが、ほかの活動の合間に教師をやるのは負荷がかかりますし、教えるのを生計の手段にするのも難しいです。本格的な就職ができていないので実務の経験を教育に活かすのも難しいです。とにかく負荷がかかります。

堀内淑子(日本ユニシスラーニング):入門レベルだから成立しているんでしょうね。オンラインセミナーにこだわらなくてもよいんじゃないですか。コストはどうにでもなると思います。企業を活用するとか。ある企業は難聴者を雇っています。ある程度の規模の企業は障害者を雇うように義務付けられていますから。・・・コンテンツの重複開発が起きがちなので、流通のネットワークを作ることも大切だと思います。

鈴木重昭:確かに必要なコンテンツが既にあることを知らないことがあります。福祉法人としても費用がかかるので独立採算のために、教育受講にもお金をいただいています。1時間千円ぐらいですが。

堀内:現状のにこだわらずにほかの仕組みを使うという質問にはどうですか。

戸谷(インフィス):ほかの仕組みって何ですか?

堀内:CD-ROMで自習して、修了したら次の人へ巡回させるとかです。

竹中ナミ(プロップステーション):そうじゃなくて、在宅でQ&Aする必要があるんです。双方向のリアルタイムで。

堀内:通うセミナーをそのままコンピュータへ移行しようとしているんじゃないですか。Q&Aは次の日に返事が来るという手もあります。リアルタイムでないといけませんか。

鈴木重昭:通うセミナー以前に、最初はメーリングリストでリアルタイムでないQ&Aをやっていました。いろいろ経験したうえで現在のようにしているんです。

君島:何となくそのまま移行したという姿勢ではないようですよ。議論がかみ合っていないみたいですが、そのほかに何かありませんか。

大西荘一(岡山理科大):アイデアが欲しいです。昨年の岡山でのフォーラムでお見せしたように、大学・高校・社会の間で遠隔教育をやっています。画像と音声のそれぞれが乱れますが、音の乱れの影響の方が大きいということが分かりました。特に聴覚障害者のためには音が問題です。要約筆記で字幕を出すという手段がありますが、要約筆記で助ける人手が少ないです。要約者も遠隔で参画するとか、何かこの方面の発明はありませんか。

鈴木重昭:聴覚障害者や視覚障害者はそれぞれほかの人と共通するところが少ないんです。したがって、視覚障害者は特別な教室で受講するとか、聴覚障害者も特別な教室が必要です。それと要約筆記は情報量が少ないです。話していることの3分の1程度しか字幕にできないようです。障害者を分けた教室でやるのが妥当だと思います。

大西:大学では聴覚障害者が一緒の教室で受講しています。

戸谷:何が教育のゴールなんですか。それによって障害者の教育手段の評価も違ってきます。

大西:いろいろです。福祉活動ができるようにとか、プログラミングとか。

竹中:音声を自動的に文字にするソフトは欲しいです。英語ではできています。ペンタゴンやIBMが開発しました。日本語は漢字変換が大変らしくて変換率が低いそうです。(解説:竹中女史はペンタゴンにも行ったことがある。近いうちにペンタゴンとインターネットビデオで結んで会合を開くとのこと)

大西:先生がその場にいない遠隔学習こそユニバーサルデザインが大切です。

中野秀男(大阪市立大):音の話題についてですが、映像のチェックは素人でもできます。しかし、音のチェックは素人にはできません。発表でも話したように大阪市大でも音が小さ過ぎるとか、大き過ぎて音が割れるなどの失敗をしました。デシベルを計測するようにして改善しましたが、このようなことは素人は気にしません。

大西:二つのレベルがあるんじゃないでしょうか。ハイレベルの処置と、障害者を少しでも助けるレベルのものと。

戸谷:音声を文字列に変換して表示することには異議があります。認知実験をしたことがあります。いつまで記憶しているか実験したら、音声に比べて文字による成績はよくありませんでした。

大西:手話による方がはるかにいいんでしょう。

竹中:手話も点字作成もできる人が少ないんです。特に古い世代の人たちは、手話を使うことが障害者であることを明らかにするので、恥ずかしいからやらないようにと育てられてきました。米国ではどんな方法でも手段として活用しています。日本では手話が一番とか文字列変換が一番とか流派が分かれて喧嘩しています。文字列は最低限として欲しいです。

君島:日本人はすぐ流派を作って喧嘩するんですよね。

大西:手話にも国語や方言があるんでしょう。

鈴木克明(岩手県立大):ライブ教師にどこまで依存するんですか。遠隔教育はしょせんは伝える教材でしかありません。教師がその場にいる対面授業と教材でできることを区別するべきでしょう。リアルタイムとノンリアルタイムも区別するべきでしょう。

竹中:プロップステーションではメーリングリスト時代もオンラインセミナーも教師と生徒のやりとりとしてはできているんですよ。

鈴木克明:大阪市立大の社会人向け遠隔授業は、音声の問題などは改善しているようですが授業の中身は変えていないんですか。

中野:一年目はまず作るという段階でした。講座の全部を遠隔にするのではないと思っていて、3回目の単元は対面授業です。

君島:教育形態や教育媒体についてこうやって口頭で議論しても進歩しないですよね。教育学として昔から確立しているわけですから。プロップステーションもそれは知っていてやっているわけです。UNIKIDSの設計機能を使って、ミックスするとか併用するとか書いてみて伝承しないと進歩しないんじゃないのかなあ。

堀内:いろいろな教育形態や教育媒体を組み合わせるべきです。大学でもいろいろやっています。CD-ROMだってオンライン教育に近いメディアミックスはできます。

君島:それはそうなんですが、口頭で伝承しているだけですよね。大学のシラバスに教育形態や教育媒体の組合せをちゃんと書くべきだと思うんです。

大西:シラバスを書くようになったけど、1時間目に何をやります、2時間目に何をやりますとしか書かないのは意味がないと思うなあ。授業テクニックなんてそんな固定的なものではないはずだけど。

君島:CD-ROM教材にしてもCDケースの外側から見えるやつ、何て言いましたっけ。ライナーズノートでしたっけ。ライナーズノートに教育形態や教育媒体をどう組み合わせているか書くべきだと思います。

大西:eラーニングは予定どおりにしか進行しない。ライブの良さは場当たり的に脱線したりするところに価値があるんじゃないかな。(解説:eラーニングこそが個人別対応が特徴ではある)

君島:いやあ、米国ではシラバスにいろいろな教育形態を使うことを書くでしょう。

戸谷:米国の大学のシラバスにはそういうことを書きます。

大西:ライブ授業の良さは内容ではなくてモチベーションだと思います。内容は教材でよいわけです。(米国の大学のように参考書の予習を当然にするかどうかでも違ってくる)

中野:大阪市立大の遠隔教育ソフトでは予算が足りなくて白板フレーム機能は抜きにしました。スライド転送に加えて白板機能を使えば、ライブで板書することができます。

堀内:スライド上にも上書き機能がありますよ。

(発言者不詳):白板フレームは本当にリアルタイム送信ですか。事後編集で取り込むんじゃないでしょうね。

孫:リアルタイム送信だったと思います。

大西:上書きにしても白板にしてもストリーミングで送信する技術はあります。でも、ビデオ・音声と時間がずれるので今一つです。リコー(?)のがよいかも知れません。

堀内:来週は東京ビッグサイトでe-Learning展示会があるので行ける人は見てください。質問ですが、スライド送信の時に教師のビデオは必要なんですか。音声だけ送ればいいんじゃないんですか。

中野:教師を映すのは大切みたいですよ。

大西:教師が確かに授業をしているという臨場感として大切なんです。

君島:去年、大西先生の遠隔教育を地元のテレビ放送局がニュースとして放送したというビデオがおもしろかったですね。英語の授業のは教師のビデオが画面の半分もあったけどあんなに大きい必要はないと思いました(解説:発音の口の形を伝えるのに必要なのかも知れない)。それと放送局は教師ビデオの方ばかり紹介していました。スライド送信の方が重要なのにテレビ屋というのはビデオにしか興味を示さないんですね。困ったもんです。

米島:音声から文字列への変換ソフトが日本語のは進んでいないとのことですが、仮名に表示するだけでは使えませんか。

竹中:実験中だそうです。NHKが。点字がそもそも仮名に相当するんですが。平仮名文字列というのはどうでしょうかね。

大西:音声入力ワープロというのがありますが、変換率が90%程度だそうです。10%も誤変換があると訂正するのが大変です。リアルタイムでは使い物にならないですね。

武田俊之(関西学院大):英語でも百%ではないと思いますよ。米国のテレビ番組でリアルタイムで字幕が出ているのを見たことがありますが、やはり90%ぐらいしか変換できていないみたいで、変換できないとしゃべり直していました。たぶん研究レベルのソフトでは百%変換できていても、商用ソフトではそこまで行っていないんだと思います。

堀内:聴覚障害の人でも頭蓋骨の震動で聴く道具があるそうですが。

竹中:聴覚障害にもいろいろあって骨震動でもだめな人がいます。

君島:そのほかに何かありませんか。

堀内:チャレンジド向けのISDセミナーをやったらどうでしょうか。

君島:プロップステーションは教育だけではないので、HPTセミナーがいいですね。

戸谷:ライブの必要な科目は全体科目の何パーセントですか。教師もリソースの一つに過ぎないわけですが。

鈴木:プロップステーションの場合は人間である教師が関わりたいんです。学校ではないので。

君島:それでは時間が来ましたので以上でパネル討論を終わります。ありがとうございました。

以上